――逃げた夜、つまずいた旅、それでも主に導かれた人生――
あの夜、エルサレムの町はどこか落ち着かない空気に包まれていました。
過越しの食事のために集まったイエスさまと弟子たち。
その部屋を用意したのが、若いマルコの家だったのかもしれません。
食卓の雰囲気は、いつもとは違っていました。
イエスさまの言葉は静かでありながら重く、
弟子たちの顔には、不安の影が見え隠れしていたことでしょう。
若いマルコは、その空気を敏感に感じ取っていたのかもしれません。
🌿あの夜、逃げてしまった青年
食事が終わり、イエスさまと弟子たちがオリーブ山へ向かったとき、
マルコは胸騒ぎを抑えられず、
寝間着代わりの亜麻布をひと巻きして、そっと後を追いました。
やがて、松明の光と怒号が闇を切り裂きました。
イエスさまが捕らえられたのです。
弟子たちは恐れ、散り散りに逃げていきました。
マルコもまた、恐怖に飲み込まれました。
兵士に腕をつかまれた瞬間、
彼は身につけていた布を振り捨て、
裸のまま逃げ出しました。
若い心に深く刻まれた、
恥ずかしさと恐れの夜でした。
🌿それでも、主を忘れられなかった
逃げた自分。
何もできなかった自分。
その痛みは、長くマルコの胸に残ったことでしょう。
それでも彼は、
イエスさまのことを忘れることができませんでした。
やがて、初代教会の働きの中で、
マルコはバルナバやパウロと出会い、
宣教の旅に同行することになります。
🌿宣教の旅での“つまずき”
ところが、旅の途中でマルコは耐えられなくなり、
エルサレムへ帰ってしまいました。
理由は聖書に書かれていません。
- 旅の厳しさに疲れたのか
- 異邦人への働きに不安を覚えたのか
- 若さゆえの恐れが再び顔を出したのか
いずれにせよ、
マルコは途中で投げ出してしまったのです。
この出来事は、パウロとの大きな対立を生みました。
「マルコを連れて行くべきではない」とパウロは言い、
バルナバとパウロは別々の道を歩むことになりました。
あの夜に逃げた青年は、
宣教の旅でもまた“つまずいてしまった”のです。
🌿それでも、主はマルコを見捨てなかった
ここからが、マルコの人生の美しいところです。
失敗し、つまずき、
人からも厳しく評価されたマルコ。
それでも彼は、
教会の働きから離れませんでした。
やがて、ペテロのそばで働くようになり、
その証言をまとめて福音書を書く人へと成長していきます。
晩年のパウロは、
「マルコは私の務めに役立つ人です」と語るほどに、
彼を信頼するようになりました。
(2テモテ4章11節 )
逃げた青年が、
つまずいた青年が、
最後には“役に立つ者”へと変えられていったのです。
🌿メッセージ
マルコの物語は、
「弱さがあっても、主は私たちを見捨てない」
ということを静かに教えてくれます。
- 若いころに逃げてしまった
- 大切な場面でつまずいてしまった
- 人から厳しく言われた
そんな経験は、誰の人生にもあります。
けれど、
失敗は終わりではありません。
主は、弱さを知る者を、
もう一度呼び出し、立ち上がらせ、
新しい働きへと導いてくださいます。
マルコの人生は、
そのことを優しく語りかけてくれる物語です。
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